今って声優ブームなんでしょうかねえ。一時期よりも落ち着いた気がします。コガ(@Koga2689)です。
僕は過去に声優を目指していた時期があります。それも社会人になってから。特に声優ブームだからとかではなく、単純に「憧れていた」からです。
貯金をはたいて専門学校に行き、養成所に行き、実際に声優になりましたし、お仕事もしました。でももう辞めました。それはなぜか?
今回はこれから声優を目指そうと考えている少年少女、社会人だけど「いつかやってみたい」と思っていた人。そんな皆さんに僕の経験談をお伝えしたいと思います。
25歳を過ぎて一念発起。夢を叶えるために専門学校へ
僕が声優になろうと思ったのは25歳を過ぎたとき。
中学時代に一度夢見たけど、どうやったらなれるのかもわからないし、なんとなく恥ずかしかったので親にも友達にも相談をしたことはありませんでした。
当時は魚屋で働いていたのだけど、25歳を過ぎ、四捨五入して『30歳』がチラついたとき、「本当にこのまま魚屋でいいのか?」と悩み、ネットで昔好きだったある声優さんを調べたら、今は専門学校で講師をやっているとわかった。
「これだ…!」
何の計画性も無く「この状況を脱したい」「昔声優になりたかったから」「憧れの声優さんに会いたい」「大学に行っていないのでキャンパスライフを満喫したい」ただそれだけの理由で専門学校へ行くことを決意した。が…
―2年間で学費260万円―
「おおう…けっこうするな」
先制パンチを食らった僕でしたが、「フッ…こんなものか」とも思いました。貯金はありました。500万円ほど。(!)
特に趣味らしい趣味もなく、仕事終わりにお酒を飲むくらいだったので、18歳から貯め続けた結果、高級車が買えるほど貯まっていました。
今にして思えば、車を買っておけば良かったと後悔しています。
専門学校入学。憧れの声優さんに師事。楽しい学生生活
なんだかんだで学生生活を楽しんだ僕。
高卒の子たちと8つも年が離れていたけど、遅れてきた青春を満喫した。
学校がない土日だけ魚屋でアルバイトをした。もちろん家計は赤字。貯金はみるみる減っていった。
でも学校に行けば憧れの声優さんに会えるし、年の離れた仲間とお芝居の稽古をして、学校帰りは飲み歩いて…。
2年次は進路に悩んだ。
いや、正確には悩みたくないから競争率の低そうな小規模なナレーション事務所を選んだ。
僕がアニメではなくナレーションを選んだ理由は、アニメは競争率も高い上に、新人は仕事一本15,000円と安く、食っていけそうにないと感じたから。
ナレーションはアニメと違ってランク制ではなく、ギャラ単価が高く、継続する仕事が多い。
要は稼げる可能性が高い道を選んだのだ。
狙い通り特待生オーディションに合格。といっても付属養成所だ。特待生はレッスン料の一部が免除されるだけだった。またお金がかかるのか…。
仲間も皆悩んでいた。声優事務所、顔出しの俳優事務所、劇団員、一般企業etc
余談だが、仲間で現在でも芸能活動しているヤツは数えるほど。今はそのほとんどが声優とは別の道を歩んでいる。
だけどそんな未来が待ってるなんて誰も考えなかった。
「声優になって好きなアニメ作品に出演するんだ!」みんな夢を見ていた。
卒業するころ、僕の500万円あった貯金は100万円台にまで減っていた。
養成所から所属オーディションを経て事務所所属へ
僕は専門学校卒業を期に魚屋のバイトを辞め、今のコールセンターで契約社員として働き始めた。
魚屋と違って手が傷だらけになることもなく、一日中座っていられるのに時給はそこそこ良い。おまけに有給もある。最高の仕事じゃないか!と思ったのも最初だけ。心無いクレームに心は傷だらけになっていった。
専門学校と違って養成所は競争だった。
養成所はレッスン料で年間30万円ほどかかったが、レッスン後の養成所恒例らしき飲み会に頻繁に出席したので、実際にはもっとかかったと思う。
飲み会に出席して講師の方々と仲良くなれば、所属オーディションに受かりやすくなるのではと考えたからだ。
人付き合いが人一倍苦手な僕だけど、頑張ってご機嫌をとっていたと思う。
その甲斐あってかはわからないが、所属オーディションは無事に受かることができた。
同時期に僕はコールセンターで出会った彼女に『僕がナレーターとして一本立ちしたその時は、結婚しよう』と婚約をした。
それが今の妻だ。
結婚しているということは、さぞ立派なナレーターになれたのだろうなあ…
事務所所属と思いきや、まだまだ下っぱ預かり所属
4月。晴れて所属オーディションに受かり、いよいよ事務所に所属かと思いきや、そこにはまだ階級が。
多くの事務所が所属者に対し「正所属」「準所属」「預かり(またはジュニア)」というランクを設定している。
事務所によって待遇は様々だと思うが、一般的には仕事をした時のマージンの割合が異なるようだ。
ただそれ以上に違うのが仕事が回ってくる割合だ。
預かり一年目の僕に仕事が来たのはその年の7月だったと記憶している。
それでも同期では早い方だった。同期の中には年が明けてもまだ一度も仕事をしていないヤツもいた。
その間どうするかというと、日々、いつ来るともわからない仕事に備えての鍛錬と、その大半の時間がアルバイトに割かれるのだ。
あとは月に数回、所属者向けの研修もあった。
研修と言っても養成所時代とそう変わらない内容でお金もしっかり取った。その研修の後に開かれる恒例の飲み会も僕たち「預かり」が下働きをした。苦痛でしかなかった。
年に数回あるイベント行事も僕たちが下働きをした。先輩にこき使われて、もう何を頑張っているのか本当にわからなくなった。
養成所時代の僕たちは、レッスン料を払ってくれる「お客様」。預かりとなった今は絶対服従の「下僕」だった。
これは今に始まったことではないと思う。きっと古くからある劇団なんかでは当たり前のことなんだと思う。
けど、なんとなく夢見たものと違うなぁ、と。
さらに仕事といえば、ナレーションではなく、外国人などに当てる「ボイスオーバー(再現VTRなんかによくあるやつ)」がほとんどだった。
仕事一本およそ15,000円。結局アニメと大差なし。しかも年に数回。
初年度の声での収入は5万円もいかなかったと思う。
なのに出費は、研修や、研修後の飲み会、イベント行事で完全な赤字だった。
バイト感覚のコールセンターでは月20万円は稼いでいるのに…
結局この「預かり」期間は2年に及んだ。
準所属に昇進からの結婚。安定を選んだ夢の終焉
3年目。僕は今までの仕事(下働き)が認められ、見事準所属に昇進した。
正直、嬉しくもなんともなかった。特に待遇は変わらなかったからだ。マージンは数%少なくなったが、仕事が増えるわけではなかった。
これは単に僕がサボっていたとかボイスサンプルが悪いとか言うより、事務所の営業力の問題だった。
事務所にだいぶ溶け込んだ僕は、飲みの席で先輩にどのくらい仕事していいるかを訊いた。僕に毛が生えた程度だった。そもそも事務所自体に仕事がなかったのだ。
結局その年も先輩からの圧力に耐えるのと、後輩の面倒をみることが大半で、本当の仕事の割合は少ないままだった。
相変わらず行われる研修、飲み会、イベント…
その頃、僕は既に30歳を過ぎていた。
彼女(嫁)は1歳年上。
将来子供を作ることを考えると、今を逃してしまうと、子供には会えないかもしれない。そんな会話が増えてきた。
正直、今の事務所の状況ではナレーションだけで食べていくことは不可能だと感じていた。
『僕がナレーターとして一本立ちしたその時は、結婚しよう』
他の事務所に移ることも選択肢としてはあったが、これといった実績もないので、また養成所からのスタートだろう。
もう無理だ。そう感じた。
すぐに結婚の準備をした。お義父さんお義母さんとの顔合わせ。指輪の購入。婚姻届提出。結婚披露宴。
披露宴で読んだナレーションは涙声で最低だったなあ…
その年度末。事務所恒例の研修の回数が増えた。今までは自主制だったが強制になった。
辞めよう。そう思った。
この年の声の収入は17万円ほどだった。ギリギリ研修や飲み代を引いてもいくらか残ったと思う。
それでもコールセンターの1か月分にも満たなかった…
声優を目指した一人の男の収益
ざっと今までかかった経費と収入です。
【経費】- 専門学校:260万円
- 養成所:30万円
- 研修費:約5万円(1回2千円程度)
- 他飲み代など:いっぱいw
- 預かり時代約8万円
- 準所属時代約17万円
結果およそ270万円の赤字でした。
諸々の出費を含めると300万円近くの赤字だと思います。
はあ…
おわりに
いかがだったでしょうか?
これは飽くまで僕の例ですが、事務所の同期は僕より酷いか、とっくの昔に辞めたかどちらかです。
僕がこれから声優を目指す人に1番お伝えしたいのは、正規ルートで声優になろうとするのは非常にコスパが悪いということです。
もし事務所に入られるのであればダメ元で有名な事務所を目指す方が良いかもしれません。ただ、声優事務所に入らなければ仕事がもらえないという考え自体、もう古いのかもしれませんね。
今の時代は個人でも情報発信できる時代です。人気さえ出ればネットからでも出演オファーが来るかもしれません。
僕は結婚を期に事務所を辞めて、今は子供にも恵まれました。
これからは今まで培ったナレーションの技術を活かして、子供のために絵本でも読んであげようと考えています。
結局、無駄なようでいて無駄ではなかった。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
ちょっと長かったですねw
夢を追って学校に行き、結果投げて彼女ができ結婚しようとしてる自分。
返信削除似たような過程で色々染みるものがありました。
結婚めっちゃ悩むと思いますが、結婚しても夢は追えます。
削除ファイトです!
youtubeから来ました。
返信削除いいじゃないですか。私はまだまだ未来は大きく変わる。と思います。
古のレールには乗れなくても、新しいレールに乗ればいいんじゃないかと思います。
あざす!
削除今まさに新しいレールに乗る時が来ました。
やったります。